夏に鮮やかなオレンジ色の花を咲かせ、秋には可愛らしい実をつける「柘榴(ザクロ)」の盆栽。
花と実の両方を楽しめることから、古くから人気のある樹種です。
花後に実が色づいていく過程は、何度見ても飽きません。
この記事では、ザクロ盆栽の育て方や季節ごとの管理方法、そして実をしっかりつけるコツまで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
※ 棚場の環境や鉢の大きさなどによっても、管理方法は変わりますのでしっかり盆栽を観察しながら調整してください。このブログでは3〜4号鉢の小品盆栽を想定しています。
基本情報
- 学名:Punica granatum
- 分類:ミソハギ科ザクロ属
- 特徴と見どころ:夏に咲く朱赤色の花、秋に熟す丸い実が最大の魅力。幹肌も年月を重ねるごとに味わい深くなり、古木感を楽しめます。
- 開花時期:5〜7月
- 実の見頃:9〜11月頃

盆栽を育てる前の準備
必要な道具と資材
剪定バサミ、ピンセット、針金、盆栽鉢(3〜4号程度)、盆栽用培養土(赤玉土や桐生砂中心)、肥料、ジョウロ、などを用意します。
苗木の選び方
ザクロには「観賞用」「実ザクロ」「花ザクロ」といくつかの系統があります。
- 実を楽しみたい → 実ザクロ(例:姫ザクロ)
- 花を楽しみたい → 花ザクロ(例:八重咲き)
盆栽の育て方
置き場所(日当たり・風通し)
ザクロは日当たりが大好きです。花つき・実つきをよくするためにも、春〜秋は屋外の日なたで管理します。
風通しが悪いとアブラムシやハダニが発生しやすいので注意。冬は寒風を避け、霜よけのある場所で越冬させましょう。
水やりの方法と頻度
ザクロは水をよく吸います。特に開花・結実期は乾かさないよう注意。
用土の表面が乾いたらたっぷり与え、真夏は朝夕2回が理想です。(遮光していなければ棚場によっては3回)
冬は乾き気味でOKですが、完全に乾燥させないようにしましょう。
肥料の与え方(種類・時期・頻度)
花後から実の肥大期にかけて、5〜9月頃に月2回程度。
油かすなどの有機肥料を置き肥として使うと、花つきが良くなります。
花芽ができる春前にも少量の肥料を与えると、翌年の花が増えます。
冬は休眠期なので肥料はストップします。
土選び・植え替え方法
水はけのよい用土を使います。
配合例:赤玉土7:桐生砂3
植え替えは2年に1回、3〜4月頃が目安。古い土を落とし、根を整理して新しい用土で植え替えます。
剪定のやり方と時期
花芽は新しい枝の先端につくため、強剪定は花後に行うのが基本です。
春に芽が動く前の剪定は控えめにして、樹形を整える程度にとどめます。
混み合った枝や内向きの枝を整理し、風通しをよくしましょう。
針金掛け・整枝の方法
若枝のうちに軽く針金をかけて形を整えます。
硬くなった枝は折れやすいので、成長期の柔らかい時期(5〜7月)が適期です。
実をつけるコツ(結実のポイント)

ザクロは花が咲いても、すべての花が実になるわけではありません。
ここでは、実を確実につけるためのコツを紹介します。
雌花と雄花の見分け
ザクロには雌花(実になる)と雄花(花だけ咲いて実にならない)があります。
- 雌花:花の根元(子房)がふくらんでいる
- 雄花:花の根元が細い
結実を増やすには、雌花を見つけたら人工授粉をするのがコツです。
人工授粉のやり方
5〜7月の開花期に、綿棒や小筆を使って、雄花の花粉を雌花のめしべにつけます。
適度な日照と肥料
実をつけるには「日光+栄養」が欠かせません。
- 半日陰では花は咲いても実がつきにくい
- 肥料不足だと花芽が減る
日当たりの良い場所で、5〜9月にしっかり肥料を与えることが大切です。
摘果(実の数を調整)
小品盆栽では、実をつけすぎると枝が弱ります。
2〜3個程度に制限して、枝や根への負担を減らすと、大きく色づいた実になります。
実が落ちる場合の対策
実が落ちる原因は以下のようなものです。
- 水切れ → 土の乾燥を防ぐ
- 肥料切れ → 花後に追肥を忘れずに
- 風・雨 → 開花時は雨除けを設ける
人工授粉+日照+安定した水やり、これだけで結実率が一気に上がります。
ホルモン処理による人工的な結実促進
自然条件や人工授粉だけでは実がつきにくい場合、植物ホルモンのジベレリン(GA)を使って結実を促すことができます。
使用するもの
- ジベレリン水溶液(一般的には濃度25〜100ppm程度)
- 綿棒または小筆
方法
- 開花初期(花が咲いた当日〜翌日)に、雌花の柱頭部分にジベレリン溶液を軽く塗布します。
- 花粉の受粉と同時に行うことで、受精を補助し、種なしでも実を成らせる効果があります。
- 1回処理で十分ですが、開花期間が長い場合は2〜3日後に再度1回塗布しても効果的です。
⚠️ 注意点
- 濃度が高すぎると奇形果や実割れの原因になるため、低濃度(25〜50ppm程度)から試すのが安全です。
- 一度に大量に処理せず、少量テストしてから本格使用がおすすめ。
- 雌花だけに処理し、雄花には行わないようにします。
- 毎年使うと樹勢が弱ることもあるため、自然授粉や人工授粉と併用して補助的に使うのが理想です。
- 人体には使用しないこと。取扱時は手袋を着用してください。
季節ごとの管理方法
春(3〜5月)
新芽が動き出す時期。芽吹きを確認したら徐々に日光に当て、肥料を開始します。植え替えや剪定もこの時期が適しています。
夏(6〜8月)
花が咲き始める季節。水切れに要注意。日差しが強すぎる場合は午後だけ半日陰に。
花後はお礼肥を与え、実を太らせます。人工授粉はこの時期に行います。
秋(9〜11月)
実が色づく季節。水やりをやや控えめにして、実割れを防ぎます。
落葉が始まったら肥料をストップし、枝の整理を行います。
冬(12〜2月)
落葉後は休眠期。寒風や霜を避け、風除けのある棚下や軒下で管理します。乾いたら少量の水を与える程度でOKです。
病害虫対策
ザクロはアブラムシ、カイガラムシ、ハダニが発生しやすいです。
- 春先:新芽にアブラムシ → 早期にピンセットで除去
- 夏:葉裏のハダニ → 霧吹きで葉水をして予防
- 冬:カイガラムシ → 割り箸などで削り落とす
予防には、春と秋にマシン油乳剤を散布すると効果的です。
お持ちの鉢数が少なければスプレータイプの薬剤が便利です。
盆栽の増やし方
- 挿し木:6月頃に今年伸びた枝を10cmほど切り、鹿沼土や赤玉土に挿すと発根しやすいです。
- 取り木:枝の中間部を環状剥皮して水苔で包むと、1〜2ヶ月で根が出ます。
- 実生:熟した実の種を洗ってまきますが、親と同じ性質にならないことが多いです。観賞用には挿し木の方が確実です。
よくあるトラブルと対処法
- 花は咲くのに実がならない:雌花が少ないか、人工授粉不足。筆や綿棒で花粉を移しましょう。
- 実が割れてしまう:急な水のやりすぎが原因。水やりをやや控え、日照を安定させます。
- 葉が黄色くなる:肥料切れや根詰まりのサイン。植え替えや追肥で改善します。
- 実が途中で落ちる:急な乾燥・強風・夜間の低温が原因。遮風と水管理で安定させます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 姫ザクロでも実は食べられますか?
A. 観賞用であり、実は小さく酸味が強めです。観賞をメインに楽しむのがおすすめです。
Q2. 実を確実につけたいときはどうすればいいですか?
A. 雌花を見極めて人工授粉を行うのが確実です。花粉は朝に採取し、晴れた日に行うと成功率が上がります。
Q3. 室内でも育てられますか?
A. 開花や結実のためには日光が欠かせません。屋外での管理が基本ですが、冬のみ屋内で保護するのはOKです。
Q4. 実を大きく育てるコツはありますか?
A. 花後に肥料をしっかり与え、実を2〜3個に制限して枝への負担を減らします。水切れを防ぐことも大切です。
Q5. 毎年実をつけさせるにはどうすれば?
A. 花後の剪定を適切に行い、新枝を育てることがポイント。ザクロは新しい枝に花芽がつくため、前年枝を残しすぎないよう注意します。
まとめ
ザクロの盆栽は、花も実も楽しめる贅沢な樹種です。
日当たりと水やりを意識し、花が咲いたら人工授粉を試すだけで、かわいい実が楽しめます。
僕も、秋に赤く色づいた実を見るたびに「今年もよく頑張ったな」と感じます。
気軽に始められて、四季の変化を楽しめるザクロ盆栽。花と実、両方を味わう喜びをぜひ体験してみてください。








