以前挿し木の記事を書いて時間が経ったので、増えた経験を元に新しく記事を書きました。
盆栽の増やし方を知りたい人や挿し木に挑戦したけどいまいちうまく行かなかった方はヒントにしてください。
挿し木ってそもそもなんだ!?
挿し木とは、枝を切って土に挿すことで新しい根を発生させて、そこから新しい木を作る方法です。なぜ挿し木するかというと、親木の特性をそのままに、新しい木を増やすことができるからです。挿し木が成功して得られる新しい木は、親株と同じ形状や特徴を持つ可能性が高いです。
一方、種から育てる実生の場合、樹の性は親木と同じになるとは限りません。
例えば、真弓のように雄木と雌木がある場合、雌木の挿し木は雌木になりますが、実生の場合、雄木になるか雌木になるかは分かりません。
節間が短くなる、他の同種の樹に比べて葉っぱが小さいなど親木の特性が気に入っている場合、挿し木で増やす方が同じ特徴の樹を増やしやすいです。
こちらの銀杏は葉っぱがとても小さい性なんですが、まだ実はなりませんし、実がなっても実生だと普通に葉っぱが大きな銀杏になってしまう可能性もあります。
なのでこの銀杏を剪定した時に挿し木にして増やしたのが下の木です。
挿し木なので葉っぱは小さいまま。小さな銀杏作りに挑戦したいと思います。
挿し木で増やせる盆栽の種類
いろんな種類の木を挿し木で増やすことができますが、すべての木が同じように成功するわけではありません。雑木類は挿し木が成功しやすいですが、松類などの針葉樹は成功率が低い傾向にあります。
真柏や一位などは挿し木に向いています。松類は取り木や接木で増やすことが多いと思います。
まずは挿し木に適した木を選ぶことが、成功率を高める鍵となります。成功しやすい木を選び、正しい時期に挿し木を行うことで、より成功率が高まります。まずは雑木から挑戦することをお勧めします。
挿し木の適期
最適な時期とその理由
挿し木は春の終わりから梅雨ぐらいが適宜だともいます。
湿度があって気温も木の成長に適している時期なので発根しやすいです。
春先や初夏、秋口でも挿し木はできますが、湿度を保つのに梅雨の時期よりは気をつけなければいけないので、この時期の挿し木は慣れてきてから調整するのが良いかもしれません。
挿し木の手順
挿し穂の選び方
挿し木にする挿し穂はあまり太すぎないほうが良いと思います。あまり太すぎると成功率も良くないですし、挿し穂は大体まっすぐな枝だと思いますので、発根した後針金で曲げて樹形を作らないと立ち上がりが直線になってしまいます。
あとは新しい枝で茎のような感じでまだ柔らかい状態だと発根率は低いです。
準備:必要な道具と材料
ハサミ・ナイフ
挿し穂を作る際に使います。
挿し穂(親木から切った枝)
まず挿し木に必要なのは挿し穂です。挿し穂とは、親木から切った枝です。
親木から枝を切ったら1〜2節ぐらい残すようにしてハサミやナイフを使ってまず切り口をこのようにします。
ここで注意することは切り口が綺麗にスパッと綺麗に切れていることです。
発根促進剤ルートン(なくても問題なありません)
発根促進のためにルートンを挿し穂につけて挿し木します。ただなくても発根しますし、ルートンをつけたら絶対発根するというわけでもないので必ず必要というわけではありません。
コップや花瓶など
挿し穂を作ったあと、コップや花瓶に水をはって挿し穂を1日ほど水につけておきます。
挿し木用土と挿し床の作り方
挿し木を50本以上してきた経験で挿し床の作り方は成功率に大きく影響する要因の一つだと思っています。僕は赤玉土100%で挿し木しています。鹿沼土100%で挿す場合もありますが、赤玉を使うことがほとんどです。
挿し床の土の量がある程度多い方が成功率が高いと感じています。
深さも浅すぎない方が良いです。鉢は駄温鉢でも良いですが、プラスチックの鉢の方が乾燥しにくいのでおすすめです。
いろいろ書きましたが、まずはプラスチックのスリット鉢に赤玉の微粒か小粒で良いかと思います。
挿し木の具体的な手順
さぁ準備は整いました。
準備で作った挿し穂を水につけて1日経ったら、挿し床に串など土の真ん中ぐらいまで挿し穴を作ります。
挿し穂にルートンをつけます。
挿し穴に挿し穂を入れて軽く土を押さえて固めます。
鉢のそこから水が出てくるまでしっかり水をやります。
挿し木後の管理
直射日光が当たらない風通しの良い日陰に置いておくと、早ければ2週間ほどで鉢の底から根っこが見えてきます。
挿し木のコツ
成功のためのコツ
湿度
挿し木の成功に非常に大切な条件が湿度だと感じています。
乾燥しやすい環境より熱帯雨林のような湿度が高めの環境が適していると思います。
乾燥させてしまうと挿し穂は枯れてしまいますので、土が乾き切らない環境が大切です。
水はけ
乾ききると良くありませんが、水はけも大切です。
水が入れ替わらない環境では腐りやすくなります。池や水たまりと同じですね、淀んだ水は腐ってしまいます。水やりの度に鉢の中の水をしっかり入れ替えてあげます。
これらの条件を満たしやすいのが、梅雨の頃にプラスチックのスリット鉢を使う方法になります。
鉢の中に常に水がある状態でなくても問題ないですが、土から湿気がでて乾かない状態になっているように注意しましょう。
失敗例
湿度と温度を高くしたまま保つと腐ってしまうことがあります。
あとは挿し穂をあまり動かさないようにします。気になって早く抜いてしまったり水を強く当てすぎて挿し穂をあまり動かしすぎると良くありません。
直射日光が当たる場所も避けましょう。挿し穂が干からびてしまいます。
挿し木から盆栽にするには?
発根後の管理
発根が確認できたら、基本的には盆栽と同じように管理します。
発根させるまでは湿度が高い状態だったと思いますが、いつまでも湿度が高い環境のままだと病気になりやすいので発根が確認できたら日当たりがよく風通しの良い場所に移しましょう。
盆栽としての形成と手入れ
発根してから半年から一年後には針金で立ち上がりの曲げをしっかりつけてあげましょう。
挿し木は実生と違って枝を挿すので直線になりがちですし、あまり置いておくと固くなって曲げられなくなってしまいます。
盆栽にするためには立ち上がりの一曲目が大事ですね。文人木のようにふんわり作るのも良いですが。
好みに合わせて曲げつけしておきましょう。
もみじの挿し木素材に針金かけした様子も記事にしていますのでよければご覧ください。
まとめ
挿し木を成功させるための要点のまとめ
繰り返しになりますが、挿し木を成功させるためには、次のことに気をつけましょう。
- 湿度
- 水を澱ませない
- 動かさない
- 直射日光を避ける
盆栽挿し木の楽しさと
最近は盆栽の素材も値段が高くなってきました。特に真柏などの松柏類は素材でも数万円することがあります。数万円の素材を使っていろいろ試すのはなかなか僕にはできません。
その点、挿し木なら木を簡単に増やせて、実生より確実に親木の特性を引き継ぐことができます。
真柏は挿し木しやすいので沢山挿してグネグネ曲げて自分好みのサイズ感でいくつも作っています。
出来上がった樹を愛でるのも楽しいですが、一から作る盆栽もやっぱり楽しいですね。
挿し木素材いろいろ
過去の記事で紹介した写真の桑はだいぶ大きくなりました。
小葉性の八房の楓、割と太めの枝を挿しましたが発根しました。
こちらも同じく小葉性の楓です。
石化檜も挿し木できますよ〜。
針ツルまさき。挿し木したあと曲げ曲げしたので小さく好みの感じになりました。
真柏は挿し木の成功率が高いので沢山作ってしまいます。