盆栽を増やす方法として代表的なのが「挿し木」です。
挿し木は、親木の性質を引き継いだ盆栽を比較的短期間で増やせるため、初心者から経験者まで幅広く行われています。
ただ、
という悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、実際に50本以上の挿し木を行ってきた経験をもとに、
盆栽の挿し木の基本から成功率を高めるコツ、失敗しやすいポイントまでを分かりやすく解説します。
盆栽の増やし方を知りたい人や挿し木に挑戦したけどいまいちうまく行かなかった方はヒントにしてください。
初心者の方は、まず2〜3本ではなく、10本程度まとめて挿し木をするのがおすすめです。成功率は100%ではないため、本数を増やすことで成功体験を得やすくなります。
盆栽の挿し木とは?|実生との違い
最大の特徴は、親木と同じ遺伝的特性を引き継げること。
一方、種から育てる「実生」は、
などが親木と異なる場合があります。
例えば、雄木・雌木が分かれる樹種では、
- 挿し木 → 親木と同じ性
- 実生 → 性が分からない
という違いがあります。
要するになぜ挿し木するかというと、親木の特性をそのままに、新しい木を増やすことができるからです。
小葉性・短節間など、気に入った性質をできるだけ引き継いで増やしたい場合は、挿し木が有力な方法です。
例えば、真弓のように雄木と雌木がある場合、雌木の挿し木は雌木になりますが、実生の場合、雄木になるか雌木になるかは分かりません。
こちらの銀杏は葉っぱがとても小さい性なんですが、まだ実はなりませんし、実がなっても実生だと普通に葉っぱが大きな銀杏になってしまう可能性もあります。

なのでこの銀杏を剪定した時に挿し木にして増やしたのが下の木です。
挿し木であれば親木の性質を引き継ぎやすいため、小葉性も維持されやすいと考えられます。
小さな銀杏作りに挑戦したいと思います。

盆栽を挿し木で増やすメリット・デメリット
メリット
最近は盆栽の素材も値段が高くなってきました。特に真柏などの松柏類は素材でも数万円することがあります。
数万円の素材を使っていろいろ試すのはなかなか僕にはできません。
その点、挿し木なら木を簡単に増やせて、実生より確実に親木の特性を引き継ぐことができます。
僕も真柏は挿し木しやすいので沢山挿してグネグネ曲げて自分好みのサイズ感でいくつも作っています。
出来上がった樹を愛でるのも楽しいですが、一から作る盆栽もやっぱり楽しいですね。
デメリット
これらのデメリットは、管理や仕立て方の工夫によって軽減できる場合があります。
挿し木で増やしやすい盆栽の樹種一覧
挿し木で増やせる盆栽の樹種は多くありますが、すべての木が同じように成功するわけではありません。
一般的には、雑木類は比較的挿し木しやすく、松類は発根しにくい傾向があります。
初心者におすすめの樹種
挿し木がやや難しい樹種
👉 最初は雑木類から始めると失敗しにくいです。
松柏類の場合、真柏や檜、杉、一位などは挿し木に向いています。
松類は挿し木が難しいことが多く、樹種によっては接木など別の方法が用いられることもあります。
まずは挿し木に適した木を選び、正しい時期に挿し木を行うことで、より成功率が高まります。
初心者の方はまずは雑木から挑戦することをお勧めします。松柏なら真柏がおすすめです。
僕がこれまでに成功したのは以下のような樹種です。
多くの樹種で挿し木は可能ですが、成功率には差があります。
盆栽の挿し木に適した時期【成功率を上げるポイント】
梅雨時期が挿し木に向いている理由
挿し木に適した時期は樹種によって異なりますが、多くの盆栽では、春の終わりから梅雨時期にかけてが成功しやすい傾向があります。時期の目安は地域の気候によって多少前後します。
理由は次の通りです。
など、発根しやすい条件がそろいやすいためです。
このため、初心者にも取り組みやすい時期といえます。
春・秋に挿し木する場合の注意点
春先や秋口でも挿し木は可能ですが、以下の点に注意が必要です。
樹種によっては冬の休眠期に行う「硬枝挿し」が適する場合もありますが、初心者の方には管理が難しいため、まずは梅雨時期の挿し木がおすすめです。
僕の栽培環境では、乾燥に注意すれば、比較的気温が低めの春先でも活着しやすいと感じています。
盆栽の挿し木のやり方【手順を解説】
挿し穂の選び方
挿し穂は、一般的には細め〜中程度の太さの枝のほうが扱いやすく、発根しやすい傾向があります。
太すぎる枝は発根しにくい場合があり、反対に柔らかすぎる新梢も安定しにくいことがあります。
また、挿し木苗は立ち上がりが直線的になりやすいため、将来の樹形づくりも意識して枝を選ぶと扱いやすくなります。
- 太すぎない枝を選ぶ
- 柔らかすぎる新芽は避け、ある程度しっかりした枝を選ぶ
- 扱いやすさを考えると、極端に曲がっていない枝のほうが挿し穂として使いやすい
必要な道具と材料
挿し木用土と挿し床の作り方
挿し木を50本以上してきた経験で挿し床の作り方は成功率に大きく影響する要因の一つだと思っています。
- 赤玉土(微粒〜小粒)など、水はけと清潔さを確保しやすい用土
- 鹿沼土100%でも可
- 深さのある鉢を使用
僕は赤玉土100%で挿し木しています。鹿沼土100%で挿す場合もありますが、赤玉を使うことがほとんどです。
挿し床の土の量がある程度多い方が成功率が高いと感じています。
深さも浅すぎない方が良いです。鉢は駄温鉢でも良いですが、プラスチックの鉢の方が乾燥しにくいのでおすすめです。
いろいろ書きましたが、まずはプラスチックのスリット鉢に赤玉の微粒か小粒で良いかと思います。
挿し木の具体的な手順
- 挿し穂を清潔にカット
- すぐに水につける(乾燥防止)
- 必要に応じて発根促進剤を使用
- 挿し床に穴を開けて挿す
- 乾燥しないようしっかり水やり
さぁ準備は整いました。
まず挿し木に必要なのは挿し穂です。挿し穂とは、親木から切った枝です。
親木から枝を切ったら1〜2節ぐらい残すようにしてハサミやナイフを使ってまず切り口をこのようにします。


ここで注意することは切り口が綺麗にスパッと綺麗に切れていることです。
挿し穂をコップや花瓶などに入れた水(またはメネデール入りの水)にすぐつける
そしてすかさず切り口を水につけます。これが結構大事です。
活力剤を使う方法もありますが、効果の出方には差があり、水だけでも挿し木は可能です。
僕はこの木は絶対発根してほしい!という時に使っていますが、メネデールを使っても100%発根してくれるわけではありません。
乾燥してしまわないようにするのがコツです。
切り口の乾燥を防ぐため、挿すまで水につけておきます。
吸水時間は樹種や状態によって異なるため、長時間の浸水は避け、状態を見ながら行います。
挿し床の準備
吸水後の挿し穂を使って、挿し床に串などで土の中央あたりまで挿し穴を作ります。(挿し穂でそのまま刺すと切り口を傷めてしまいます。)
発根促進剤ルートンを付ける(なくても問題ありません)
発根促進剤(ルートン)を使う方法もあります。樹種や管理環境によって効果の差はありますが、補助的に用いられることがあります。
ただなくても発根しますし、ルートンをつけたら絶対発根するというわけでもないので必ず必要というわけではありません。
挿木する
挿し穴に挿し穂を入れて軽く土を押さえて固めます。
しっかり水をやる
鉢の底から水が出てくるまでしっかり水をやります。
盆栽の挿し木後の管理方法
盆栽の挿し木を成功させるために、特に重要なのが湿度・水はけ・管理方法です。
挿し穂は根がない状態のため、乾燥するとすぐに枯れてしまいます。
一方で、水が滞留しすぎると腐敗の原因にもなります。
これらを意識することで、発根しやすい環境を整えやすくなります。
発根するまでの管理
条件が良ければ数週間で変化が見られることもありますが、樹種によっては発根まで1か月以上かかることもあります。
発根後の置き場所と注意点
発根後は、
- 風通しの良い場所
- 徐々に日当たりへ移動
過湿状態を続けると病気の原因になるため注意しましょう。
盆栽の挿し木のポイント
湿度
挿し木の成功に非常に大切な条件が湿度だと感じています。
乾燥しすぎない、高めの湿度を保てる環境のほうが適しています。ただし、蒸れすぎると腐敗の原因になるため注意が必要です。
乾燥させてしまうと挿し穂は枯れてしまいますので、土が乾き切らない環境が大切です。
水はけ
乾ききると良くありませんが、水はけも大切です。
水が入れ替わらない環境では腐りやすくなります。
池や水たまりと同じですね、淀んだ水は腐ってしまいます。
水やりの際は、鉢底から水が抜ける程度に与えて、用土内に水が滞留しにくい状態を保ちます。
こうした条件を整えやすい方法のひとつが、梅雨時期に乾きすぎにくい鉢と排水性のよい用土を使うことです。
鉢の中に常に水がある状態でなくても問題ないですが、土から湿気がでて乾かない状態になっているように注意しましょう。
失敗例
湿度と温度を高くしたまま保つと腐ってしまうことがあります。
あとは挿し穂をあまり動かさないようにします。
気になって早く抜いてしまったり水を強く当てすぎて挿し穂をあまり動かしすぎると良くありません。
直射日光が当たる場所も避けましょう。挿し穂が干からびてしまいます。
挿し木が枯れてしまった場合でも、原因を振り返ることで、次回の管理改善につなげやすくなります。
特に「乾燥」と「過湿」は表裏一体のため、管理環境を見直すことが重要です。
挿し木から盆栽に仕立てる方法
針金掛けのタイミング
針金掛けは、十分に活着して生育が安定してから行います。
時期の目安は樹種や生育状態によって異なりますが、若いうちのほうが曲げやすい傾向があります。
針金で立ち上がりの曲げをしっかりつけてあげましょう。
挿し木は実生と違って枝を挿すので直線になりがちですし、あまり置いておくと固くなって曲げられなくなってしまいます。
樹形づくりの考え方
挿し木苗は直線になりやすいため、将来の樹形を考えて若いうちから曲づけの方針を決めておくと仕立てやすくなります。
盆栽にするためには立ち上がりの一曲目が大事ですね。文人木のようにふんわり作るのも良いですが。
好みに合わせて曲げつけしておきましょう。



もみじの挿し木素材に針金かけした様子も記事にしていますのでよければご覧ください。
挿し木素材いろいろ
過去の記事で紹介した写真の桑はだいぶ大きくなりました。


小葉性の八房の楓、割と太めの枝を挿しましたが発根しました。

こちらも同じく小葉性の楓です。

石化檜も挿し木できますよ〜。

針ツルまさき。挿し木したあと曲げ曲げしたので小さく好みの感じになりました。

真柏は比較的挿し木しやすいため、素材づくりに取り入れやすい樹種です。


よくある質問(FAQ)
盆栽の挿し木にいちばん向いている時期はいつですか?
樹種によって多少異なりますが、多くの盆栽では春の終わりから梅雨時期にかけてが挿し木しやすい傾向があります。湿度が保ちやすく、気温も安定しやすいため、初心者にも取り組みやすい時期です。
盆栽の挿し木は初心者でもできますか?
はい、できます。特に真柏・もみじ・ケヤキ・クチナシなど、比較的挿し木しやすい樹種から始めると成功しやすくなります。最初は2〜3本だけでなく、10本前後まとめて挿すと成功体験を得やすくなります。
挿し木しやすい盆栽の樹種は何ですか?
一般的には、真柏、もみじ、ケヤキ、榎、真弓、紫式部、クチナシなどが比較的挿し木しやすい樹種です。反対に、松類は発根しにくいため、初心者にはやや難しく感じることがあります。
挿し木に使う枝はどんなものを選べばよいですか?
細め〜中程度の太さで、柔らかすぎない枝を選ぶのがおすすめです。太すぎる枝は発根しにくい場合があり、逆に若すぎて柔らかい新芽は安定しにくいことがあります。扱いやすさを考えると、極端に曲がっていない枝のほうが使いやすいです。
挿し木の用土は何を使えばよいですか?
赤玉土の微粒〜小粒など、水はけがよく清潔に保ちやすい用土が使いやすいです。鹿沼土を使う方法もあります。大切なのは、乾燥しすぎず、かつ水が滞留しにくい環境をつくることです。
挿し木したあとは毎日水やりしたほうがいいですか?
大切なのは、回数を機械的に決めることではなく、用土を極端に乾かさないことです。水やりの際は、鉢底から水が抜けるように与え、用土内に水が溜まりすぎないように管理します。乾燥しすぎも過湿も失敗の原因になります。
盆栽の挿し木はどれくらいで発根しますか?
条件がよければ数週間で変化が見られることもありますが、樹種によっては1か月以上かかることもあります。気になっても途中で抜いて確認すると傷みやすいため、挿し穂を動かさずに管理することが大切です。
挿し木が枯れる原因は何ですか?
よくある原因は、乾燥・過湿・直射日光・挿し穂のぐらつきです。挿し穂は根がない状態なので、乾燥に弱い一方で、水が滞留しすぎると腐りやすくなります。明るい日陰で、風通しと湿度のバランスを取りながら管理することが成功のポイントです。
発根した後はすぐに日なたに出してもいいですか?
いきなり強い日差しに当てるのは避けたほうが安心です。発根後は、風通しのよい場所で管理しながら、少しずつ日当たりに慣らしていくのがおすすめです。急な環境変化は負担になることがあります。
挿し木した苗はいつから盆栽らしく仕立てられますか?
十分に活着して生育が安定してから、少しずつ仕立てていきます。挿し木苗は立ち上がりが直線的になりやすいため、若いうちに将来の樹形を考えておくと仕立てやすくなります。ただし、無理な針金掛けは負担になるため、樹の状態を見ながら行いましょう。
まとめ|盆栽の挿し木を成功させるコツ
繰り返しになりますが、挿し木を成功させるためには、次のことに気をつけましょう。
挿し木は、低コストで理想の盆栽素材を増やしやすい、魅力的な方法のひとつです。
ぜひ挑戦して、盆栽作りをもっと楽しんでください。










